りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

青空と逃げる(辻村深月)

四万十の村、瀬戸内海の小島、別府の温泉町、そして仙台。流浪の生活を続ける母と息子は、何から逃亡しているのでしょう。劇団員だった父親が大女優の運転する車で事故に遭ったことがきっかけでした。その女優は自殺し、父親が行方不明になったことで、マスコミや芸能事務所の執拗な訪問が、残された母と息子の生活を一変させてしまったのです。

 

あてのない逃亡生活ですが、その中で2人は強くなっていきます。自信もなく人付き合いも苦手な母親の早苗も、ただ守られる存在であった小学五年生の力も、行く先々での人々との出会いや自然とのふれあいの中で成長していくのです。

 

しかしこのような逃亡生活がいつまでも続けられるものではありません。このままでは力は学校へも行けませんしね。物語は読者が納得できる結末に至らないといけないのです。それは破綻なのか、大団円なのか。父親は大女優と不倫をしていたのでしょうか。なぜ彼は逃亡しているのでしょうか。両親の離婚を恐れる息子は、何か秘密を隠しているようなのですが・・。仙台でのボランティア場面が『『傲慢と善良』とリンクしていることも話題になりましたが、著者が用意してくれた結末は読者の意表を衝いてくれました。ちょっと都合よすぎるようにも思えるのですが。

 

2022/7