りぼんの読書ノート

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十一面観音巡礼(白洲正子)

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今年のGWに湖北・木之本町近辺の「観音の里」を訪れたこともあり、本書を読んでみました。かくれ里の著者が、大和、近江、京都、若狭、美濃、信州の山里に、仏像の中でも大衆の信仰心を最も篤く受けてきた十一面観音を訪ね歩いたとき、何が見えたのでしょう。

観音ですから性別はないのですが、女神のような容姿を持つ像が多いようです。ただし、慈悲深い表情を見せてくれるのは正面だけ。左側に瞋怒面、右側に牙出面、背後に暴悪大笑面を併せ持つという矛盾に満ちた姿について、著者は「人間の悩みから完全に脱してはいず、それ故に親しみ深い仏のように思われる」と述べています。

さらに著者は、各地を巡ったあとで「十一面観音は仏教を超えた存在」とまで言い切ります。ある時は天照大神、ある時は竜神、ある時は大自然と混淆された十一面観音には、あらゆる神性が込められているというのです。日本における宗教のあり方を代表する存在なのですね。

各章のタイトルと、そこで登場した観音像を有する寺社名を記しておきましょう。
聖林寺から観音寺へ (聖林寺
・こもりく泊瀬    (長谷寺
・幻の寺       (法華寺
・木津川にそって   (観菩提寺
・若狭のお水送り   (芳賀寺)
・奈良のお水取り   (二月堂)
・水神の里      (室生寺
・秋篠のあたり    (薬師寺
・登美の小河     (勝林寺)
・竜田の川上     (松尾寺)
・姥捨野間の月    (智識寺)
・市の聖       (月輪寺
・清水の流れ     (甲賀櫟野寺)
・白山比咩の幻像   (美濃日吉神社
・湖北の旅      (渡岸寺)
・熊野詣       (那智出土品)

拝観したことがあるのは、今年のGWの渡岸寺を含めても1/3足らず。とりあえず、表紙になっている聖林寺には行ってみたいものです。

2016/6