りぼんの読書ノート

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聖ペテロの雪(レオ・ペルッツ)

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1932年3月。ドイツの病院で目覚めたアムベルクは、「交通事故にあってから5週間ここで昏睡していた」と医師から告げられます。しかし、彼の記憶は違っていたのでした。彼は、亡父の旧友だったというフォン・マルヒン男爵の領地に医者として赴き、男爵の計画が破綻する様子を目の当たりにしてきたのです。

男爵の計画とは、神聖ローマ帝国の皇帝であったホーエンシュタウフェン家の復活だったのです。ローマ皇帝と敵対したフリードリッヒ二世の死後、その子孫は絶えたと思われていたのですが・・。

男爵が養子とした不思議な少年フェデリコとは、何者だったのでしょう。そして、アムベルクが思いを寄せていた美しい女性生理化学者ビビッシェが、男爵とともに研究してきた「聖ペトロの雪」とは何のことなのでしょう。「聖ペトロの雪」が降る晩、住民は熱狂の中で新皇帝を頂くはずだったのですが・・。

男爵の計画自体が「壮大な妄想」なのですが、男爵の存在自体がアムベルクの「妄想」なのではないかという、二重の「語り」を含む、現代的な幻想小説です。ヒトラーに「禁書」とされたこの作品が、1933年に書かれていたことにも驚かされます。この作者のことを初めて知りましたが、もう少し読んでみたくなりました。

2016/4