りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014 My Best Books

今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみます。
長編小説部門(海外)

図書室の魔法(ジョー・ウォルトン上巻下巻

1979年に15歳であった女性が、SF作品の読書と「魔法」体験を通じて成長していく物語。著者自身を思わせる主人公が「信用ならざる語り手」でありながら「信用できる読み手」であるというアンバランスさがいいですね。

例年であれば海外小説のベストは候補が多すぎて悩むところなのですが、今年はどれも小粒だったように思えます。他の候補は、型破りな『こうしてお前は彼女にフラれる(ジュノ・ディアズ)』、ハードSFの傑作『白熱光(グレッグ・イーガン)』など。旧作ならば『コレリ大尉のマンドリン(ルイ・ド・ベルニエール)』。
長編小説部門(日本)

小説フランス革命(佐藤賢一)

フランス革命前夜から、ロベスピエール処刑までを描いた全12巻の力作がついに完結。数多い登場人物を描き分けながら、混沌状態の革命の進展を道筋立てて整理した力量も、最後にロベスピエール人間性の問題に絞り込んでいく手法も、ともに素晴らしい作品でした。


短編小説部門

ディア・ライフ(アリス・マンロー)

昨年のノーベル文学賞受賞者にふさわしい作品集でした。とりわけ著者自身が「フィナーレ」と銘打ったラスト4編は、両親への愛に溢れていて胸を打たれます。「でもわたしたちは許すのだ。いつだって許すのだ」と総括した最後の一文は、山口百恵が引退公演でマイクを置いて退場したことに匹敵する迫力です。


ノンフィクション部門

おだまり、ローズ(ロジーナ・ハリソン)

20世紀半ば、イギリス貴族制が大きく揺らいだ時期に、型破りな子爵夫人に35年もの間使えたメイドの回想記です。機知と美貌を備えながら気まぐれで我儘な雇い主に対して、才能と好奇心と気の強さで互角に渡り合ったメイドは、いい勝負であり、最後には深い信頼関係も生まれたようです。脇役たちの活躍も含めて、時代を表現した作品になりました。

今年は優れたノンフィクションをたくさん読んだように思います。他の候補は、『パン・アメリカン航空と日系二世スチュワーデス(クリスティン.R.ヤノ)』、『かくれ里(白洲正子)』、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯(塩野七生)』、『ダンスシューズで雪のシベリアへ(サンドラ・カルニエテ)』など。ジャレド・ダイアモンドさんの新作や、今年まとめ読みしたサイモン・ウィンチェスターさんの著作なども、もちろん素晴らしい作品でした。

今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。2015年もいい1年にしたいものです。家庭も、仕事も、読書も、そして健康も。来年もよろしくお願いいたします。

2013/12/29