りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

エディに別れを告げて(エドゥアール・ルイ)

イメージ 1

20歳を超えたばかりの青年が、過去からの逃走の顛末を語った、衝撃的な私小説です。

著者の出身地であるフランス北部のピカルディ地方は、男が力で家族を支配し、ワルであることが美徳とされる封建的な地域だそうです。学校を卒業しても工場で力仕事につく以外の選択肢はなく、貧困と差別と暴力から逃れられない生活が待っているだけ。

そんな地域で、女の子のような容貌と性格をしたエディ・ベルグルには、居場所も逃げ場もありませんでした。学校では壮絶な苛めにあい、マッチョな父親や兄からは軽蔑され、無知で無力な母親からは憐れまれるだけ。やがて同性愛を体験したエディは、ますます追い込まれていきます。

本書は、そんなエディが過酷な境遇から脱出して、現在に至るまでの過程を綴った作品です。彼がいかに過去を忌み嫌ったのかは、「エディ・ベルグル」という姓も名も捨てて、「エドゥアール・ルイ」と改名したことにも現れています。読んでいて辛くなる箇所も多いのですが、これもが現実なのでしょう。

2016/4