りぼんの読書ノート

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無菌病棟より愛をこめて(加納朋子)

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2010年6月、七人の敵がいるの出版準備中に突然、著者は「急性白血病」だと告知されてしまいます。放置すれば数カ月の命。治療しても5年生存率は3分の1。

病名を聞いたとたんに誰もが無言になるという「メジャーな難病」に対して、抗癌剤治療から骨髄移植手術を経て退院に至るまでの闘病生活は、壮絶なものでした。とにかく「発熱、痛み、食欲不振、吐き気、脱毛・・」というネガティブな症状が続くだけではありません。その間ずっと、死の恐怖にも襲われ続けているのです。

とはいえ、リアルタイムで記していたという闘病記は、決して暗くはありません。それは、「愛してくれる人たちがいるから、なるべく死なないように頑張ろう」という著者の、「ほんわかとした姿勢」によるのでしょう。ベッドでさめざめと涙を流すことはあっても、心を折らずに、諦めず、投げ出さず、ユーモアを保とうとする姿勢には、しなやかさを感じます。

著者は、文庫版の出版に際して「生きているって本当に素敵!」と素直に喜ぶ一方で、「病とは、実に理不尽なものです。人生そのもののように、不公平で残酷です」と述べています。それでも本書を書いたのは、白血病と宣告された方とご家族に対して「自分の経験を届けたい」という思いからだとのこと。「情報は、闘うための力」なのだからと。

著者は現在、七人の敵がいるの続編である『我ら荒野の七重奏(セブテット)』を連載中だとのこと。いつまでもご健康で執筆を続けてくださることを、祈念させていただきます。

2016/4