病名を聞いたとたんに誰もが無言になるという「メジャーな難病」に対して、抗癌剤治療から骨髄移植手術を経て退院に至るまでの闘病生活は、壮絶なものでした。とにかく「発熱、痛み、食欲不振、吐き気、脱毛・・」というネガティブな症状が続くだけではありません。その間ずっと、死の恐怖にも襲われ続けているのです。
とはいえ、リアルタイムで記していたという闘病記は、決して暗くはありません。それは、「愛してくれる人たちがいるから、なるべく死なないように頑張ろう」という著者の、「ほんわかとした姿勢」によるのでしょう。ベッドでさめざめと涙を流すことはあっても、心を折らずに、諦めず、投げ出さず、ユーモアを保とうとする姿勢には、しなやかさを感じます。
著者は、文庫版の出版に際して「生きているって本当に素敵!」と素直に喜ぶ一方で、「病とは、実に理不尽なものです。人生そのもののように、不公平で残酷です」と述べています。それでも本書を書いたのは、白血病と宣告された方とご家族に対して「自分の経験を届けたい」という思いからだとのこと。「情報は、闘うための力」なのだからと。
著者は現在、『七人の敵がいる』の続編である『我ら荒野の七重奏(セブテット)』を連載中だとのこと。いつまでもご健康で執筆を続けてくださることを、祈念させていただきます。
2016/4