りぼんの読書ノート

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我ら荒野の七重奏(セプテット) 加納朋子

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ワーキングマザーの「ブルドーザー陽子」が、ひとり息子の陽介の小学校入学とともに始まったPTAライフを描いた七人の敵がいるの続編です。前作では「七人の敵」を最終的には味方にしてしまった陽子でしたが、今度の舞台は中学校。吹奏楽部に入った陽介をサポートする「保護者会」の旧態依然たる不合理な運営方式に対して、陽子のパワーが炸裂します。

小学校時代のサッカー部で「部活の親」を経験していた陽子でしたが、中学校の吹奏楽部となると、その大変さもグレードアップ。演奏会場予約のために2日前から徹夜で行列。定期演奏会の受付や、パンフ作成や、広告取りも親の仕事。楽器は学校の備品ですが、消耗品やメンテ代などにかかる費用を公平に負担させるには慎重さが必要だし、楽器の運搬や、生徒の送迎や、お弁当の準備だってかなりの負担。何より楽器のパート分けや、部活に対する姿勢の違いを纏めていくのは至難の業なのです。

それでも今回の陽子にはあまり無駄な動きがなかったのは、保育園時代からのママ友である看護師の遥が「陽子の使い方」に慣れたせいでしょうか。それに陽子と対照的な性格で、権力志向皆無で献身的な泣き虫主婦の京子が、いい味を出しています。損な役回りですが、こういう人がいないとボランティア活動は回って行きません。陽子も彼女と出会ったおかげで、今さらながら意識改革できた部分もあったようです。

前作を出版した直後に急性白血病で入院した著者ですが、パワフルな陽子の奮闘ぶりを書いている間は、病気を忘れていられたとのこと。「子育てという荒野」を行く陽子が、高校生となる息子とどう向き合っていくのか、ぜひ続編を期待したいものです。ところで、陽子が初登場したのは『レインレイン・ボウ』だとのこと。未読でした。

2017/8