りぼんの読書ノート

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レインレイン・ボウ(加納朋子)

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七人の敵がいる我ら荒野の七重奏(セプテット)の主人公「ブルドーザー陽子」が初登場した作品とのことで、図書館から借りてきました。本書を書いた当時は、一番の苦手キャラの陽子を主人公にシリーズを書くとは思ってもいなかったそうです。どれも「7つながり」になっています。

本書は、高校時代のソフトボール部の仲間だった智寿子の病死を知らされ、8年ぶりに集まった7人の元同級生たちの物語。それぞれの人生を歩み出している女性たちの姿を描いていく中で、亡くなった智寿子と、失踪した里穂が抱えていた謎が浮き彫りになっていきます。

専業主婦の美久の「夫が本当に好きだったのは智寿子でなかったか」との疑問や、出版社に勤める陽子が会った覆面作家の「死んだのは智寿子ではなく里穂だったのではないか」という荒唐無稽な推理や、保育士の佳寿美が「園児の母親の離婚を偽装」と見抜く話は、「成りすまし」という本書のテーマに繋がっていくようです。

看護師の緑が、病院に定期健診に来ていた智寿子から、里穂と同じ会社に就職しなかった理由を「重くなったから」と聞いたという話は、読者をミスリードさせますね。この言葉には主語が省略されているのです。独身無職のりえが姉の結婚式の二次会で出会った不審な男(実は智寿子の兄)も、妹の悲しい嘘に騙されていたようです。食品会社から社員食堂に出向中の由美子の「思い込みエピソード」も、もちろん伏線です。

そして本書で主役的な役割を務める陶子が、全員の話から真相を推理するのです。そこから浮かび上がってくるのは、重い病気を抱えながら明るく振る舞い続けた智寿子が懸命に生きた姿と、彼女に対する里穂の篤い友情でした。失踪した里穂は意外な場所に潜伏していたのですが、高校時代から皆に慕われていたキャプテンの陶子が、仲間たちの関係を取り持ってくれるのでしょう。著者には、片桐陶子が主人公の『月曜日の水玉模様』という作品もあるとのことです。

2017/8