りぼんの読書ノート

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世紀の空売り(マイケル・ルイス)

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副題は「世界経済の破綻に賭けた男たち」。リーマンショックの直前、世界中がアメリカの住宅バブルに酔っていた2000年代半ばに、そのまやかしをいち早く見抜いていた男たちの姿を描いたノンフィクションです。

サブプライムローンの破綻が、なぜ巨大な投資銀行を倒産させるほどの威力を持っていたのでしょう。いかに巨額とはいえ、返済能力の低い者たちに押し付けた住宅金融(MBS)だけでは、それほどの破壊力はなかったはず。詳細は記しませんが、「債権ロンダリング」ともいうべきCDOという仕組みが、投資を何倍にも増幅させていたのです。

その背後には、詐欺的な仕組みを作り上げた天才たちや、リスクを見ぬけなかった経営者たちや、おざなりな仕事をしていた格付け機関がありました。役割こそ違え、そのいずれにも共通していたのは、巨額な報酬に対する貪欲さにほかなりません。しかし、彼らの行く手には断崖絶壁があったのです。

そのリスクを回避するための手段が、CDSというデリバティブ。債権が破綻するリスクが1%としたらその1%を払い続け、いざ債権が破綻したら100倍の金額が戻ってくるという保険的な手段なのですが、要するにギャンブル。

この悪魔的なところは、実際の債権発行額と関わりなく、デリバティブの売り手と買い手さえいれば、際限なく繰り返され、無限大の市場を作り出せてしまうこと。アメリカの不動産バブル崩壊天文学的な損失を引き起こしたのは、そういうことだったのか・・。

本書は、それをいち早く見抜いて荒稼ぎをした、いずれも個性的な3つのヘッジファンド経営者と、ひとりの投資銀行マネージャーたちの物語。なかなかスリリングなストーリー展開であり、映画化もされました。

しかし、多くの投資銀行ヘッジファンドがつぶれたものの、彼らは死に絶えてはいません。どうやら、1000兆円もの残高を持つ日本国際も投機対象になっているようなのです。マイナス金利が株式市場の大暴落を引き起こしたことも、それと無関係ではないのでしょう。「日本経済の破綻に賭けた男たち」などという本が書かれるようにはなって欲しくないものですが・・。

2016/3