著者の大ヒットシリーズ『ハゲタカ』の主人公で事業買収を得意とする鷲津のライバル役が、事業再生家の芝野です。本書は、その芝野を主役に据えたスピンアウト作品。時期的には、中国が日本の代表的自動車メーカーに買収を仕掛ける『レッドゾーン』と、リーマンショックの背景を描いた『グリード』にかけての期間のできごとに当たります。
2007年9月、東大阪の中小メーカー・マジテックの創業者にして天才発明家の藤村登喜男が急逝。彼こそ、若きバンカーだった芝野に、事業再生家として歩むきっかけを与えた恩人だったのです。マジテックを救うために、事業再生が軌道に乗り始めた大手電機メーカー・曙電機から転じた芝野でしたが、彼を待っていたのは「ものづくりニッポン」を支えているはずの町工場が苦境に陥っている姿でした。
大企業からの締め付けや買い叩き、後継者問題や作業員の高齢化、自己の利益を優先する金融機関。それでもようやく、新しい芽を育てて事業再生のきっかけを掴んだ矢先に、リーマンショックが起こります。そして、ハゲタカ・ファンドによる買収攻撃。絶体絶命のピンチに陥った芝野は、かつて藤村から支援を受けたという鷲津をも巻き込んで、決死の反撃を試みるのですが・・。
2016/3