りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ダブルギアリング(真山仁)

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著者が、ハゲタカでデビューした前年に、大手生保社員と合作で発表していたという「幻のデビュー作」です。

物語の舞台は生命保険会社。バブル破綻後の1990年代後半から2000年代にかけて経営危機に陥った生保会社が、相次いで海外の大手保険会社に吸収・売却されたことは、まだ記憶に新しいものがあります。本書は、崖っ縁に立たされた生保マンたちの行動を描いた作品です。

主人公は、同期入社して意気投合しながら、社内で異なる道を歩んできた2人の幹部社員。業界の暗部とかかわってきた社長室次長・各務と、エリートながら地味な仕事をこなしてきた総合企画部企画担当部長・中根。各務は『ハゲタカ』の鷲巣の原型であり、中根は芝野とほとんど一体のキャラですね。

破綻を目前にしながらも政治主導の救済や合併を期待し続け、保険契約者の利益をないがしろにしていた生命保険会社に、外資が目を付けたのにはウラがあったようです。彼らの狙いは、生保と持ち合い体質を続けていた銀行でした。生保の破綻の連鎖で経営危機に陥るであろう日本のメガバンクを手に入れようとしていたというのです。

本書では、各務や中野らの進言を入れた経営陣の潔い決断によって、その目論みを防いだことになっていますが、実際の所はどうだったのでしょう。長期信用銀行外資の手に落ちたことを思うと、メガバンクも決して安泰であったわけではなかったと思うのですが・・。

2016/