りぼんの読書ノート

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破落戸(諸田玲子)

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「破落戸」と書いて「ごろつき」と読みます。著者が15年かけて書き続けているシリーズの第5作ですが、第1作:あくじゃれ瓢六から第3作:べっぴんまでが「シーズン1」。続く再会と本書が「シーズン2」になるのでしょう。

 

大火でお袖を失ってから5年。気力を失って逼塞していた瓢六も、前作で盟友の北町奉行所同心・篠崎弥左衛門と再会し、水野越前守を後ろ盾に悪行をはたらく南町奉行の「妖怪」こと鳥居甲斐守との闘いに立ち上がりました。

 

しかし、時代の動きは急なのです。鳥居の裏切りによる水野の失脚、水野の復活と鳥居の解任、そして水野の再失脚。本書は、その時代を背景にして、敵と味方が、権力者と敵対者が目まぐるしく入れ替わる中で、「悪事は悪事」と筋を通し続けることが、何と難しいことか。

 

犯罪に手を染めた蘭学医。悪の一味に利用された昔馴染み。鳥居や水野への復讐心から身を誤った者たち。中でも水野に心酔するあまり、行き過ぎた制裁を加えようとする若い侍の集団「青山党」の存在は不気味です。瓢六と弥左衛門は、与力の菅野、新しい友人となった若き勝麟太郎、反水野勢力の旗頭・不争斎(老中・阿部正弘の兄)に使える謎の女性・お奈緒様らは、次々と事件に見舞われます。ついに瓢六は、水野との直接対決の場に乗り込むのですが・・。

 

40歳を過ぎた瓢六にはかつての溌剌とした子悪党ぶりは望めませんが、その分、円熟味は増したようです。その一方で、颯爽としたお奈緒様に恋心を抱くなど、まだ枯れ切ってもいないのです。身分違いの2人の関係がどうなるのか予断を許しませんが、「シーズン2」はここで終了でしょうか。次の「シーズン3」は幕末?

 

2016/3