りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

べっぴん(諸田玲子)

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長崎通詞所で目利きをしていた反骨心旺盛な色男の瓢六を主人公とするあくじゃれシリーズの第3作です。入牢した際に与力の菅野に人間力を見込まれて、奉行所を助けて難事件を解決する役割を担ってしまった瓢六ですが、無罪放免となった後も、同心の篠崎弥左衛門との友情は続いているのです。

今回の事件は、犯罪者の元締め的な存在ながら、通すべき筋は通し、瓢六とも互いに信頼関係にある杵蔵と関わっていました。杵蔵が糸を引いた打ち壊しの最中に起きた大金の盗難事件、その事件を知っていた商家の出戻り娘の殺害事件、瓢六と一緒に瓦版を出していた版元の殺害事件、それらすべてが、杵蔵に疑いがかかるように仕組まれていたのです。そして事件の影に見え隠れする、どこか儚げな美女は、何を目論んでいるのでしょう。一連の事件の背景には、その女性の不幸な生い立ちがあったのですが・・。

本書の縦糸となった事件の間にも、さまざまな展開が起きています。瓢六に恋の指南を仰いでいた堅物同心の弥左衛門は、ついに思いを遂げて八重さんと結ばれます。瓢六は、鋭い才覚や明察力を持ちながらも、何も成し遂げていない自分に嫌気がさして、惚れあっているお袖の家を出ていきます。要するに、自分が行うべきことを見出そうと模索しているのです。嫉妬深いお袖も、そんな瓢六を深く信じて待ち続けるようです。

2001年に開始されたこのシリーズの第4作『再会』は、2013年に出版されています。数年に1冊ペースという、息の長いシリーズの真のテーマは、瓢六の成長なのかもしれません。

2016/1