りぼんの読書ノート

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想い人(諸田玲子)

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「あくじゃれ瓢六捕物帖」シリーズの第6作が3年前に出ていたとは知りませんでした。もっともこのシリーズは、2001年の第1作から3~4年の間隔で忘れたころに出版されてきていますので、リアルタイムで読んでいた読者にとっては慣れたものなのかもしれません。私は前5作を6年前に一気読みしたので、懐かしい気分にさせられたのですが。

 

もともと瓢六とは、稀代の色男で知恵者で、長崎でオランダ通詞や唐物目利きをしていた人物なのです。江戸に出てきて賭博で捕まった瓢六が、奉行所与力から才能を見込まれて捜査協力を求められる物語が第1巻~第3巻で、これが第1部。そんな彼が恋女房のお袖を火事で失って自堕落な生活に落ち込んでしまい、妖怪・鳥居耀蔵との戦いを通じて立ち直っていく物語が第4巻~第5巻で、これが第2部。そして本書は、単独で第3部ともいえる内容になっています。

 

恋女房のお袖が江戸の大火で行方不明になって8年が経ち、水野・鳥居が失脚した後の江戸は一時的ではあれ平穏なようです。既に40歳を超えているものの、まだ男の魅力を保っている色男の瓢六の許に、今日もまた厄介事が持ち込まれてきます。居候先のお殿様の心中事件に、姿をくらました琉球王家のお姫様捜し、仇討ちの仲裁などに多忙であり、武家のお奈緒様からも想いを寄せられているのですが、彼のもとに意外な情報がもたらされます。なんとお袖に似ている記憶を失った女性が、某藩で生きているというのです。これは虚報なのでしょうか。仮に吉報だとしても、今更できることがあるのでしょうか。いったい瓢六の選択とは?

 

おそらくこのシリーズはこれで終了なのでしょう。しかしあと10年足らずで幕末が始まるわけで、本書にも若い頃の勝海舟が登場しているくらいですから、第4部として幕末篇を期待したいものです。

 

2022/1