りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

こんちき(諸田玲子)

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あくじゃれ瓢六シリーズの第2作です。主人公は、長崎通詞所で目利きをしていた反骨心旺盛な色男の瓢六。入牢した際に、与力の菅野に人間力を見込まれて、奉行所を助けて難事件を解決する役割を担ってしまいました。無罪放免となった後も、同心の篠崎弥左衛門との友情は続いているのです。

「消えた女」
お上を風刺する瓦版屋に誘われた瓢六が、幕府要人と関わって行方不明になった女の捜索に乗り出します。実の所、女の方がしたたかなんですけれどね。一方、与力の指示で、身元不詳の武家の母子が長屋に住み始めます。

「孝行息子」
ある大店の孝行息子の悪評を書いた瓦版の依頼主は、孝行息子本人だというのです。果たしてどんな狙いがあるのでしょう。すべてわかった上で悪女に騙されてあげる男の物語。一方で同心の弥左衛門と、想い人八重との関係が進展しそうです。

「鬼と仏」
盗んだお宝の隠し場所を吐かない大泥棒の本音を聞き出すために、再度入牢した瓢六は、泥棒が何を守ろうとしているのか気づきます。

「あべこべ」
なんと瓢六と相思相愛関係にある芸者のお袖が、簪を盗んだかどで女牢へ入れられてしまいます。いつもの逆の展開にあたふたする瓢六ですが、やはり裏には与力の思惑がありそう。一方、瓦版絵師の十五郎の昔話がヒントになって、簪泥棒事件の真相も明らかに。嫉妬深いお袖が、他人の嫉妬のとばっちりを受けるというのも「あべこべ」ですね。

「半夏」
瓢六が入牢していた時の牢名主・雷蔵の病状が悪化。名主不在となって争いが激化した牢に送り込まれた瓢六に、争いを治めさせる秘策を授けたのはお袖でした。共食いは誰の利益にもならないのですね。

「こんちき」
父親殺しの罪を着せられた友人を、瓦版の力で救って欲しいという依頼人の正体は何だったのでしょう。一方、長屋に匿われていた武家の母子に危険が迫ります。もちろん、瓢六の奇想が冴えわたります。

ところで、瓢六のキャラ設定にはモデルがいるそうです。著者が会社勤めをしていた時の上司だというのですが、たぶんかなり盛っていますよね。実際にこんな人がいるとは思えませんので。ただ、瓢六を囲むユニークなキャラの登場人物たちは、実際にもいそうです。

2016/1