りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

まっさら(田牧大和)

イメージ 1

主人公の六松は、1年前までは掏摸だったものの、江戸で評判の清廉潔白な目明し「稲荷の紋蔵」に見出され。十手持ちとしての見習い修行を始めた若者。生まれ変わって真っ当な人間になるという決意を新たにするための「真っ平、真っ新(まっさら)」という言葉を口癖にしています。

そんな六松が、紋蔵の世話で一人住まいをすることになった長屋で、さっそく事件に巻き込まれてしまいます。住人のひとりが溺死したというのに、なぜか冷淡な店子たち。大店の西村屋から引き抜きを受けている職人たち。その西村屋の手代と逢引を重ねているらしい手習いの師匠。そして、六松がほのかな恋心を抱く幼馴染のおみつは、やはり紋蔵の世話で西村屋の女中となっていたのです。すべてが西村屋に結びついていく中で、六松は紋蔵の意図に疑いを抱くのですが・・。

もちろん最後には真相が明らかになるのですが、少々趣向を凝らし過ぎた感じが否めません。清廉潔白さが評判の紋蔵は実は清濁併せ飲むタイプの切れ者で、より深刻な疑惑を追うために、六松を手駒として使っていたのです。そのあたりは限度をわきまえているという設定なのですが、真相を知った読者から見ても限界ギリギリの感じなのですから。

物語の基本線は六松のビルドゥングロマンです。彼に試練を課す紋蔵、彼を暖かく見守る紋蔵の妻の千代、彼を教え諭す彼を先輩の新助と、役者も揃っているのですが、シリーズ化されるかどうかは微妙な感じもします。

2016/10