りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀6 本流篇(高田郁)

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大坂天満の互服商「五鈴屋」に奉公人として入った幸は、事情あって主家の3人兄弟と次々に結婚することとなり、「享保の改革」によるデフレで物が売れない時代の中でも、事実上の主人として商売を大きくしていきました。 

 

しかし江戸進出に向けて準備を重ねている最中に、夫で六代目店主の智蔵が病に倒れてしまいます。「女名前禁止の掟」に縛られる大阪商人社会の中で、幸はどのようにして五鈴屋の暖簾を守り抜くのでしょうか。智蔵が浮世草子の書き手を夢見て家を飛び出していた時代に、彼を助けてくれた芸者との間に子を生していたことも暗示されますが、その母子は既に別の人生を歩みだしているようです。 

 

その一方で、江戸進出計画は着々と進んでいます。呉服の大店が立ち並ぶ日本橋を避けて浅草田原町に居抜きの店舗を見つけ、絹織物に加えて木綿の太物も扱う手はずを整え、巧みな宣伝と凝ったディスプレイで勝負を賭ける幸が選んだ開店日は12月14日。既に浄瑠璃や歌舞伎で話題になっていた忠臣蔵の討ち入りの日ですね。もちろん五鈴屋のモットーは、買い手も売りても幸せにする商売を営むこと。店頭現銀売りでありながら、屋敷売りのようなきめ細やかな対応を心がけることは、商習慣も客の気質も異なる江戸で通用するのでしょうか。 

 

不幸な少女時代を過ごした妹の結も、奉公人時代に女中仲間として苦楽をともにした竹も梅も、若い番頭や手代たちも、幸のリーダーシップのもとで「人材」として育ってきています。先延ばしになっている跡目問題が気になりますが、ビジネスはうまく回り始めました。次巻の展開はどうなるのでしょう。 

 

2020/2