りぼんの読書ノート

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終わりなき道(ジョン・ハート)

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デビュー作のキングの死以来、ミステリでありながらも家族の確執や愛憎を濃厚に描いてきた著者の新作は、やはり重層的な作品でした。

刑事のエリザベスは、少女監禁犯を拷問・射殺したのではないかと疑われ、州警察から調査されているのですが、どうも真相を語っていないようです。彼女には、真相を明かせない理由があったのです。同じころ、かつてエリザベスが敬愛していた元刑事エイドリアンが、刑務所から釈放されます。彼は、ある女性を猟奇的に殺害した罪を負って服役していたのですが、エリザベスは彼の潔白を信じ続けていました。

しかしエイドリアンの出所直後に、過去の事件と同じ手口で猟奇的殺人事件が起こります。彼は再犯を繰り返したのでしょうか。それとも犯人は別にいるのでしょうか。であるならエイドリアンはなぜ、自身の罪を認めたのでしょうか。

エイドリアンにかけられた嫌疑を晴らすため、事件の捜査を始めたエリザベスですが、捜査権を取り上げられているため思うにまかせません。やがて彼女も犯人幇助の罪を着せられて追われる身となるのですが、その過程でエリザベスの生い立ちに遡る、2人の結びつきが明らかになってきます。そして、全ての事件は深い所で関係しあっていたのです。

ミステリとしても秀逸ですが、相変わらず内容の濃い作品です。ただし原題の「Redemption Road」を「終わりなき道」と訳したのは、どうなのでしょう。もともとの意味である「救済」とか「解放」の言葉を用いた方が、内容の深さと響き合うように思えます。映画「The Shawshank Redemption」を「ショーシャンクの空に」としたのは名訳だと思いますが。

2017/6