りぼんの読書ノート

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水戸黄門 天下の副編集長(月村了衛)

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水戸黄門の諸国漫遊は、原稿督促が目的だった? 『国史大日本史)』完成を悲願とする光圀公は、いくら督促しても原稿を上げてこない執筆者たちに業を煮やし、自ら町人に身をやつして諸国原稿取り立ての旅に出発。お供を申しつけられたのは、水戸彰考館で国史の編纂に携わる覚さん・介さんと、実は甲賀忍者のデスクのお吟。密かに一行を支えるのは、読者として国史出版を待ちわびている将軍から派遣された、伊賀忍者風車の弥七

ところが遅筆揃いの執筆者たちは一筋縄ではいきません。いかさま博打で負けて好色本を書かされていたり、缶詰にされても脱出を試みたり、スランプ脱出のための気分転換を求めたり、果てはロミジュリもどきの恋煩いで執筆どころではない始末。

しかも、それらの背後には恐るべきライバル出版社がいたのです。その正体は、真田幸村の末裔で、豊臣方に都合の良い史書を出版させようとする真田月読姫。絶世の美女揃いの真田忍軍を操って、執筆者たちを奪取しようという、まさに御公儀をないがしろにする大陰謀。果たして、編集者たちの闘いの結果は・・。

痛快なパロディ作品でした。おなじみの水戸黄門一行に現代の編集者たちの苦労を体験させ、「缶詰・スランプ・パクリ」などの言葉には中国の故事由来をこじつけ、各地の温泉ではお吟の入浴シーンもあるという読者サービスもついています。文字ですが・・。ラストは、はじめは嫌がっていた旅から学問の意味を学んだ角さんが、次の行先に心弾ませる場面で綺麗に決まりました。

2017/6