りぼんの読書ノート

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英国紅茶予言師(ティー・カウンセラー)七海花音

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身よりもなく養護施設で育った日本の少年シンが、奨学金を得て英国パブリックスクールに留学。しかし貴族の師弟ばかりの全寮制男子校では、学費や寮費以外にもなにかと出費が必要なのです。高価な制服代を節約するために、卒業生からお下がりを譲ってもらおうとしたところから、彼の世界が広がって行きます。

紅茶の香りを嗅ぐと少し先の未来が見えるという能力を生かして、大金持ちの伯爵家の次男で皆の憧れの的だった元監督生のエドワードや、ルームメイトになった没落貴族の息子ギルバートらと仲良くなりますが、東洋からの貧乏な留学生など、パブリックスクールには場違いですよね。彼を毛嫌いする者のほうが圧倒的に多いのです。しかもその先頭に立っているのが校長なのでから、始末に負えません。シンはイギリスの階級社会に風穴を開けられるのでしょうか。

ちょっと意味不明な作品でした。シンの素性も仄めかされますが、最後まで明かされません。わざわざ現実離れした設定を持ち込んだ紅茶予言能力も、それほど役に立ちませんでした。何より、偏見貴族たちの鼻を明かすために、英国王室という水戸黄門的な存在を持ち込んだことには、本末転倒の感があります。

本書は、ラノベ作家であった著者が、文庫に書き下ろした文芸作品第1作とのこと。まだ成長過程にある作家さんなのですね。半年後に続編も出版されたのは何よりです。本書の物語が大きく膨らんで行って、伏線も生かされる展開となって欲しいものです。

2019/2