りぼんの読書ノート

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駒子さんは出世なんてしたくなかった(碧野圭)

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書店ガールの著者による「お仕事小説」の主人公は、出版社で働く水上駒子42歳。高校生の息子を持ちながら、元カメラマンで専業主夫の夫に助けられて、管理課という裏方部署の課長職に就いています。

そんな彼女に突然下った次長への昇進辞令には、もちろん裏があるのです。社内で起こったセクハラ騒動からのイメージアップのため、女性抜擢のポーズを見せる必要があったのです。しかも同時に昇格した、女を使うことも厭わないヤリ手の同性ライバルと部長職を争うことになってしまいました。セクハラ、パワハラが横行する旧体質の男社会で、慣れない仕事を懸命にこなす駒子でしたが、家庭内にも問題勃発。果たして彼女の未来はどうなるのでしょう。

突然に元会長夫人が参入する「水戸黄門」のようなラストはご都合主義にすぎますが、途中の駒子の真情は真に迫っています。男性社会で「名誉男性」として扱われる一方で、若手女子社員からは目標にされることは辛いですね。夫には仕事に出て欲しくないと思う男性化した気持ちや、息子との接点の少なさに気づかされる場面などは真に迫っています。会社のポーズだろうと何だろうと、こういう問題意識を持った女性が抜擢されていかないと、男社会の会社は変化しないのでしょう。

2019/2