『ドクトル・ジバゴ』とは何の関係もありません。1967年の作品ですから、ほぼ半世紀前。今では許されない差別的表現などもありますが、ルパンをベースにして、さまざまなミステリを混ぜ合わせたようなユーモア感覚は、現代でも色褪せていません。ちなみに、本書との共通点もうかがえる『ルパン三世』の連載開始も、ほとんど同時期です。
全世界を股にかけ、48を越える国語を自由にあやつり、老若男女どんな人間にも姿を変え、その正体は誰も知らない。そんな怪盗ジバコが盗んだ額は、一国の国家予算をはるかに超えているそうです。巨大な組織を築き上げて莫大な財を手中にしてからは、楽しみのために盗みをしているようで、1万ドルを盗むのに10万ドルをかけることもあるらしい。
本書は、そんな怪盗のユーモア溢れるエピソードから成る短編集。フィジーでのドタバタ劇。カラコルムで作家の北杜夫をペテンにかけて公式伝記作家に雇用した顛末。日本での明智小五郎との対決。デンマークでの蚤の盗難。駆け出しのころトプカピ宮殿での老ルパンとの出会い。007をコケにして、最後に「ジバコの恋」というのは、やはり『ルパン、最後の恋』を意識しているのでしょうか。
そして恋をしたジバコは、最後になって初心に戻るのです。肥大した組織に乗っているだけの怪盗には、魅力がありませんからね。しかし、ドライバー1本でエッフェル塔を盗むとは・・。
2016/2再読