りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

複成王子(ハンヌ・ライアニエミ)

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アルセーヌ・ルパンをベースにしたサイバーパンクスペースオペラの第2作です。前作量子怪盗にて、過去の記憶と謎の箱を取り戻した怪盗ジャン・ル・フランブールと、彼を「ジレンマの監獄」から救い出した戦闘美少女ミエリは、意識を持つ宇宙船ペルホネンに乗って、地球へと向かいます。

精神共同体によって封鎖された地球にただひとつ残された都市シッルは、まるで「アラビアン・ナイト」の世界。廃墟から掘り出される「死せる魂=ゴーゴリ」は精霊として使役され、ワイルドコードが荒れ狂う砂漠は人外魔境。そこでは、事物の本質を理解するための「物語」が、重要な役割を果たしているのです。

シッルの有力者の娘で、変り者として知られているタワッドッドは、姉のドゥンヤーザードから不思議な依頼を受けるのですが、それは怪盗ジャンの目的とどのように交差していくのでしょうか。どうやら、怪盗ジャンが求めているものも、神々のように太陽系を治めている精神共同体の最重要人物に関する物語のようなのですが・・。

怪盗ジャンの得意技が変装なのは、ルパンへのオマージュですね。ところが精神の複製やダウンロードによって事実上の不死が得られている世界が舞台なので、正体を隠しているのはジャンだけではありません。そのおかげで、新しい人物が登場するたびに正体を疑うハメになってしまいました。

さてえ、情報と武器を入手したジャンは、精神共同体との対決に向かうのでしょうか。そこに、精神共同体と対立している「ゾク」はどのように絡んでくるのでしょうか。ここまで読んだ感じをルパンになぞらえると、精神共同体はフランス内部の的であり、「ゾク」のほうは得体のしれない外国勢力の印象ですが、即断をせずに続編を待ちましょう。

2015/12