りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

生まれるためのガイドブック(ラモーナ・オースベル)

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11の短編のテーマは「生命」に結びつくさまざまなことがら。「誕生」妊娠」「受胎」「愛」などのキーワードを巡るちょっと不思議な物語。こういう作品は、往々にしてヌラッとした気持ち悪さを残しがちなのですが、どの作品も読後感が意外と爽やかなのが、この作者の魅力なのでしょう。

「安全航海」
祖母たちが気づくと、海上を航海する船の中。「死出の旅」という言葉がよぎるけれど、老婆たちの旅は、無意味で不思議で安全な航海なのです。

「ポピーシード」
赤ん坊の知能のまま8歳になったポピーに、第二次性徴の萌芽が現れます。悩む両親に医者が示した解決策は、ポピーの「成長の種」を摘み取ることだったのですが・・。

「心房」
父親のわからない子供を身籠ったティーンエイジャーの娘は、自分の胎内で成長していき、次第に人間になっていくものに、何を語りかけるのでしょう。そもそも、その子は人間になるのでしょうか?

「引き出し」
妻が妊娠したとき、夫の身体に「引き出し」ができてしまいます。妻が体内で子供を育てる間、夫は自分の引き出しに何をしまっておくのでしょうか。

「キャッチ・アンド・リリース」
大リーグの投手を目指す少女の前に現れ、キャッチボールの相手を申し出た老人は、生者ではありませんでした。それでも、交互に身の上話をする2人の間には心が通うのでます。

「セイバー」
エスニックの歯科助手と知り合った娘は、自分の名前の由来を語りながらつぶやきます。「自分が何者かってわかる?家族抜きで。自分だけだと何者なのだろう。」

「老いも若きも」
老人たちばかりが住む町で愛し合う少年と少女は、人生の行く末について考えてしまいます。でも、今たいせつなのは、愛し合うこと。

「支流」
愛を育むたびに胸から生えてくる「ラブアーム」。人生において人を愛した回数が目に見えてしまう世界では、人々は愛した過去をどう説明するのでしょう。あるいは愛さなかった過去のことも。

他には、「人生にようこそ、おめでとう」「雪は遠くに」「大言壮語」が収録されています。

2015/12