りぼんの読書ノート

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あくじゃれ瓢六(諸田玲子)

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直木賞候補となった、痛快時代小説です。主人公は、芸者お袖の情人になっている、瓢六という謎めいた色男。賭博の手入れの際に捕われた際、江戸で頻発していた悪評の高い武家や商家に対する強請との関係を疑われ、なかなか牢屋敷から放免させてもらえません。

町奉行所与力・菅野が、こんな瓢六に難事件を解決させようとして、堅物の同心・篠崎弥左衛門とコンビを組ませるというのが物語の大枠。瓢六の正体も次第に明らかになってくるのですが、まだ全貌は見えてきません。長崎で唐絵目利きを務めた関係で、阿蘭陀語にも通じ、先ごろ追放されたシーボルトとも関係があったようなのですが・・。

「地獄の目利き」
療養中の元岡っ引の娘が殺害されたのには、どのような事情があったのでしょうか。瓢六は、彼女が連れていた子供の面倒を見たために容疑をかけられた男は、罪を犯していないと確信します。鍵は子供のほうにあったのです。

「ギヤマンの花」
阿蘭陀商館長お気に入りのギヤマンが盗まれた事件の犯人として、名乗り出た男は2人。案の定、2人とも真犯人をかばっていたのです。すぐに江戸切子が作られてギヤマンなど珍しくなくなるという、瓢六の予言は、もちろん当たったはずですね。

「鬼の目」
大牢内で囚人が毒殺された事件と、両国回向院の花供養潅仏会で甘茶に毒が混入されるという事件は、どこかで繋がっているのでしょうか。瓢六はベラドンナという薬草の存在を指摘します。

「虫の声」
瓢六が事件を解決して牢に戻ってくると、牢名主の雷蔵は療養場所に送られて、牢内の雰囲気が一変していました。どうやらこれは、瓢六を口封じさせようという陰謀のようなのですが・・。

紅絹の蹴出し」
同心・弥左衛門が密かに思う女性に縁談が! まさか、その縁談話と、湯屋紅木綿の蹴出しばかりを盗むボケ老婆とが繋がってくるとは、意外なものです。

「さらば地獄」
鼠小僧と噂される男が捕まって入牢。囚人たちからもてはやされる男を見て、瓢六は偽物だと気づくのですが・・。ついに瓢六は解き放たれるのですが、与力や同心たちとの関係は、まだまだ続きそうです。瓢六の正体も、強請事件の真相も明らかになっていませんしね。調べてみたら、このシリーズは既に5冊発行されており、まだ続いているようです。

2015/12