りぼんの読書ノート

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その女アレックス(ピエール・ルメートル)

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2014~2015年の各ミステリ・ランキングで1位を独占し、「6冠」に輝いた作品です。しかし、良くできたミステリに共通することですが、レビューは書きにくい。ネタバレにならないよう、気を付けないといけませんので。

物語は、美しい女性がパリの路上で見知らぬ男に誘拐されて監禁されるところから始まります。しかし誘拐犯の目的は、身代金でも、変質行為でもなく、彼女を苦しめて殺害することにあるようなのです。彼は彼女にどのような怨恨を持っているのでしょう。

誘拐の目撃者から通報を受けた警察は、ようやく誘拐犯を見つけ出した時、死の罠は既に仕掛けられた後でした。監禁場所を秘匿したまま、誘拐犯は自殺。果たして女性は救出されるのでしょうか・・という物語は、第2部でいきなり崩れ去ります。

その女アレックスとは何者で、何を目的にしているのか。彼女の真の目的は、物語の様相が再度崩れ去る第3部のラストでしか明らかにされませんが、それまでの間、読者の中の「アレックス像」も大きく揺れ動くはずです。これこそミステリの醍醐味ですね。

本書は、やはり誘拐事件で妻を失ったという、小柄な「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」の第2作とのこと。おそらく次々と発刊されるであろう、他の作品も楽しみな作家です。

2015/9