りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

パードレはそこにいる(サンドローネ・ダツィエーリ)

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主人公のコロンバは、勇猛果敢でずば抜けた能力を持ちながらも、囮捜査のために赴いたパリで爆弾事件に巻き込まれて現在は休職中の女性捜査官。彼女を助ける失踪人捜査コンサルタントのダンテは、少年時代に誘拐犯に監禁されたことから閉所恐怖症を患っています。 

 

一連の事件の発端は、ローマで女性が惨殺され、6歳の息子が行方不明になったことでした。夫に容疑がかかりますが、捜査の方向性に疑問を持った警察幹部ローヴェレは、コルドバとダンテに独立捜査を依頼します。この事件が、未だに捕まっていない自分の事件の真犯人と関係があるとの直観を抱いたダンテですが、誰も取り合ってくれません。次第に孤立していく2人の前でローヴェレは爆殺され、なんと警察から容疑をかけられてしまいます。 

 

窮地に陥った2人がいかにして事件の真相を暴いていくのかという物語ですが、内容はかなり深い。ローマの事件はダンテの過去のみならず、コロンバの過去とも関わっていたのであり、「パードレ」と呼ばれる真犯人は意外なところに潜んでいたのです。しかもダンテの過去は、まだ清算されていなかったというのですから。 

 

イタリアミステリですが、北欧ミステリの影響を多く受けている作品という印象です。主人公である男女の造形や、過去から引きずっている忌まわしい事件の内容が『ミレニアム』と似ている印象でしたので。舞台となっているローマやクレモナの特徴をもっと描き込んでくれると楽しめたのですが、自国の読者向けの作品には、ダン・ブラウンのような観光案内的要素は不要なのでしょう。 

 

2020/7