神社のお祭りで飴細工のお店を出している、2人の青年の物語。この世ならざるモノが見えてしまう叶義の指示で、牡丹が作る妖怪型の飴細工には、不思議な力があるのです。それは、その人に憑いている妖怪を落とす力。しかし、妖怪を落としてしまうことが、その人にとって良いことなのかどうかは、別の話です。
美容師の女性に憑いた「赤錆」は、彼女の指先を限界以上に動かし続けていました。もはや「赤錆」なしには、鋏を握ることもできなくなっていたのです。ダンスが得意なのに運に見放されていた女子高生には「運種」が憑いていました。妖怪を落とした彼女は、自分の力で運を招き寄せることができるのでしょうか。
中年女性に、牡丹と亡くした息子と混同させたのは「醜美」の仕業でした。にのせいでした。息子を天才芸術家と思い込んだ女性には、過剰な期待で息子を死に追いやってしまった過去があったのです。そして子供時代に神隠しにあったことがある叶義は、その時に一緒に遊んだ「狐繰」と再会。「狐繰」が与えてくれる「もう一度」とは、いったいどんな能力だったのでしょう。
荒削りだったデビュー作『ミミズクと夜の王』の頃と比べると、完成度の高い作品を書くようになったと思います。ただ、『サエズリ図書館のワルツさん』や『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』では色濃く残っていた「ダーク・ファンタジー」の印象が、若干薄くなっているようなのが気になります。主人公に「イケメン2人組」を持ってきたせいでしょうか。
2015/8