りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

光の子供(エリック・フォトリノ)

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フランス映画の黄金時代に、映画スタジオの写真家だった父親をもった主人公ジルは、自分の母親を知らずに育ちました。わかっているのは、父親が遺した膨大なポートレートのどこかに、母親の写真が潜んでいるということだけ。父が愛した女優とは、ジャンヌ・モロー、アヌーク・エーメ、それとも・・。

名作映画の光の中に母親を探し続けていたジルが、運命の女性マイリスと出会ったのは、父親が亡くなった日のことでした。すでに若くはなく女性経験も豊富なジルが、夫も息子もいるマイリスに惹かれたのは、彼女の中に母親の面影を感じ取っていたからなのでしょうか。

本書は、ジルとマイリスと彼女の夫の三角関係の物語になっていくのですが、その背後には別の三角関係が潜んでいるのでしょう。ジルは、自分の父親と、母親を争っているように思えるのです。やがて、母親らしき存在が浮かび上がってくるとともに、マイリスとの三角関係も終わりを迎えるのです。

「大人は判ってくれない」、「突然炎のごとく」、「いとこ同士」、「情事」、「夜」、「恋人たち」、「太陽はひとりぼっち」、「死刑台のエレベーター」・・。ヌーヴェル・ヴァーグの名作映画とレトロなパリの町並みを背景として、映画と現実を行き来するような愛が綴られていきます。こういう本を読むと、パリに行きたくなるのです。でも、移民と観光客が溢れる現実のパリは、映画の中のパリほど魅力的ではないのかもしれません。

2015/5