りぼんの読書ノート

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金魚生活(楊逸)

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中国東北部でレストランに勤める林玉玲は、夫と8年前に死別した51歳の未亡人。まだまだ綺麗な玉玲に言い寄ってくる店主を袖にしたせいか、レストランの水槽で飼っている高価な金魚の世話という、面倒な仕事をおしつけられています。

そんな玉玲が日本に渡航することになります。日本に留学して就職し、留学生仲間と結婚して日本で暮らしている一人娘の出産を手伝うことになったのです。初めての日本で言葉も通じず戸惑う玉玲に、娘は日本人と再婚して日本で暮らすことを提案。中国で付き合い始めた男性がいることを娘に告げられないまま、娘のアレンジで強引に見合いをさせられるのですが・・。

「損得の主張が肯定されている中国人」と、「損得の主張に後ろめたさを感じる日本人」の間には、情緒的な差が生まれ安いのでしょう。でも中国人だって100%の功利主義者ではないし、日本人だって打算的なのです。そして誰でも、損得抜きの「情け」で付き合う関係の大切さもわかっているのです。両国民の微妙なズレと共通点を描かせたら、自身が留学生であった著者が第一人者ですね。

しかも著者は、期待の上を行くのです。李白の詩を通じて共感できそうな日本人男性との出会いの場で、玉玲は、自分が本当に望んでいることは何なのか、ついに理解するのです。そしてそれは、両国の国民性の違いなどを超越しているのです。そんな玉玲のたどたどしい日本語での叫びは、読者の心を打つ言葉になりました。もちろん、タイトルにある「金魚」は、キーワードです。

2015/4