りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

流転の魔女(楊逸)

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居酒屋で時給900円のバイトをしながら、法律の勉強にはげむ中国人女子留学生・林杏。弁護士である同級生の父親から中国人容疑者を接見する際の通訳を依頼されて、高額報酬を手に入れます。といっても、一回1万5千円が数回。それでも時給に直すと4000円程度ですから、プチ贅沢くらいは許されますよね。

林杏が見聞きするリアリスティックな物語と、林杏が手放した5千円札(樋口一葉)が世界中の財布を流浪する旅の物語とが、交互に進んでいきます。

林杏の物語は、通訳バイトで見聞きした中国人犯罪者たちの仲間割れの様子も、居酒屋のバイトを代わってもらった中国人の友人が金の亡者になっていく様子も、中国の両親が再生医療の仲介ビジネスで失敗する様子も、みな生々しいですね。流浪しながら世界の紙幣との交流する樋口一葉の物語には、ほどよく誇張された滑稽さを感じます。紙幣になる人物は「国家の顔」なんですね。

そんな中で、「お金に狂わせられない生き方をするって難しい」と実感しながら、地道にバイト生活を続ける主人公のキャラがいいですね。日本留学時代に授業料の工面にも苦労したという著者の分身なのでしょう。

2014/4