構想を抱いてから10年。第1巻の刊行からも6年。バスティーユ襲撃前夜からロベスピエール処刑までを描いた全12巻の壮大なシリーズがついに完結しました。佐藤賢一さんの『小説フランス革命』です。革命の理想が現実と乖離していく過程を、複数の視点から丹念に描いたシリーズは、塩野七海さんの『ローマ人の物語』にも比肩しえる作品と思います。 例によって自伝的な変奏曲の一作であるアーヴィングさんの新作は、新たな視点を持ち込んでくれたものの、少々パンチに欠ける気がしました。パターンに慣れてしまったこともあるのでしょう。
1.小説フランス革命12 革命の終焉(佐藤賢一)
全12巻シリーズの最終巻では、ジャコバン派の独裁政治が「テルミドールのクーデタで覆される「革命の終焉」までが描かれます。「当初は爽快であったロベスピエールの演説が、ある時点から不快に感じられるようになった」という著者の、革命の変質点を探る推理が冴え渡ります。ミラボー、デムーラン、マラー、ダントンら、革命の担い手たちを身近に感じるようになれるだけでも、このシリーズを読む価値がありますね。
全12巻シリーズの最終巻では、ジャコバン派の独裁政治が「テルミドールのクーデタで覆される「革命の終焉」までが描かれます。「当初は爽快であったロベスピエールの演説が、ある時点から不快に感じられるようになった」という著者の、革命の変質点を探る推理が冴え渡ります。ミラボー、デムーラン、マラー、ダントンら、革命の担い手たちを身近に感じるようになれるだけでも、このシリーズを読む価値がありますね。
2.村上海賊の娘(和田竜)
毛利・村上水軍が織田水軍を破った「木津川口海戦」を小説化するに際して、著者は魅力的な人物を持ち出してきました。主人公の名は村上景(きょう)。能島村上家の姫君です。戦好きで、男勝りで、現代的な美女ながら、当時の感覚では醜女でしかない姫君が、家を守ることしか考えない男たちの中で光り輝きます。今年の本屋大賞受賞作。
毛利・村上水軍が織田水軍を破った「木津川口海戦」を小説化するに際して、著者は魅力的な人物を持ち出してきました。主人公の名は村上景(きょう)。能島村上家の姫君です。戦好きで、男勝りで、現代的な美女ながら、当時の感覚では醜女でしかない姫君が、家を守ることしか考えない男たちの中で光り輝きます。今年の本屋大賞受賞作。
3.聖なる怠け者の冒険(森見登美彦)
祇園祭の宵山の夜を舞台に繰り広げられる冒険譚は、『宵山万華鏡』の不思議なテイストに『有頂天家族』のタヌキを織り込んで、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』のエッセンスも取り込んだ、著者の世界観をテンコ盛りにしたような作品です。怪人「ぽんぽこ仮面」や黒髪の乙女に右往左往させられる主人公は、「怠け者が怠け者のままで冒険する」という矛盾を克服できたのでしょうか。
祇園祭の宵山の夜を舞台に繰り広げられる冒険譚は、『宵山万華鏡』の不思議なテイストに『有頂天家族』のタヌキを織り込んで、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』のエッセンスも取り込んだ、著者の世界観をテンコ盛りにしたような作品です。怪人「ぽんぽこ仮面」や黒髪の乙女に右往左往させられる主人公は、「怠け者が怠け者のままで冒険する」という矛盾を克服できたのでしょうか。
【その他今月読んだ本】
・はなとゆめ(冲方丁)
・深紅の碑文(上田早夕里)
・無垢の領域(桜木紫乃)
・三匹のおっさん ふたたび(有川浩)
・ときぐすり(畠中恵)
・悪の法則(コーマック・マッカーシー)
・誰よりも狙われた男(ジョン・ル・カレ)
・世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ(下川裕治)
・貧乏お嬢さま、メイドになる(リース・ボウエン)
・嘆きの橋(オレン・スタインハウアー)
・とんずら屋請負帖2 仇討(田牧大和)
・オリンポスの神々と7人の英雄 3.アテナの印(リック・リオーダン)
・盆栽/木々の私生活(アレハンドロ・サンブラ)
・緑の毒(桐野夏生)
・正妻 慶喜と美賀子(林真理子)
・鷲たちの盟約(アラン・グレン)
・インフェルノ(ダン・ブラウン)
・ツーリストの帰還(オレン・スタインハウアー)
・流転の魔女(楊逸)
・はなとゆめ(冲方丁)
・深紅の碑文(上田早夕里)
・無垢の領域(桜木紫乃)
・三匹のおっさん ふたたび(有川浩)
・ときぐすり(畠中恵)
・悪の法則(コーマック・マッカーシー)
・誰よりも狙われた男(ジョン・ル・カレ)
・世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ(下川裕治)
・貧乏お嬢さま、メイドになる(リース・ボウエン)
・嘆きの橋(オレン・スタインハウアー)
・とんずら屋請負帖2 仇討(田牧大和)
・オリンポスの神々と7人の英雄 3.アテナの印(リック・リオーダン)
・盆栽/木々の私生活(アレハンドロ・サンブラ)
・緑の毒(桐野夏生)
・正妻 慶喜と美賀子(林真理子)
・鷲たちの盟約(アラン・グレン)
・インフェルノ(ダン・ブラウン)
・ツーリストの帰還(オレン・スタインハウアー)
・流転の魔女(楊逸)
2014/4/29