『ツーリスト』とは、CIAが世界中に放っている極秘のエージェントたちのこと。前巻である事情から「自首」したミロは、釈放後に復帰を果たしますが、妻や娘との関係はなかなか元には戻りません。
そんな中、ドイツ国内で移民の少女殺害を命じられたミロは非情に徹しきれず、少女を拉致監禁するだけにとどめるのですが、そのことが後に大きな意味を持ってきます。この指令の背後にあった陰謀とは、何だったのでしょうか。
一方で、「ツーリスト」を管理する組織「ツーリズム」内部に中国のスパイが潜入しているという驚愕の情報がもたらされます。二転三転する状況の中で情報源をたどりながら推理を巡らせるミロでしたが、真相が判明した時に大きな悲劇に襲われてしまいます。
妻にも明かせない極秘情報を抱えながら、家族との関係に悩まざるを得ないのはスパイの宿命でしょうか。著者をル=カレと比較する向きもありますが、どちらかというとレン・デイトン系統と思います。本書のエンディングを忘れないうちに、続編の発行を望みます。同じ著者の「ヤルタ・ブールヴァード・シリーズ」は、全5巻あるのに『嘆きの橋』と『極限捜査』で止まってしまいましたので。
2014/4