りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

上海ファクター(チャールズ・マッキャリー)

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文庫版で439ページある作品ですが、ほとんど最後まで事件は起こりません。途中で登場する女性殺し屋の存在なども、その時点では意味不明の存在ですし。全てが明らかになるのは最終版、主人公の怠惰な人生が何年も何年も過ぎてからなのです。

アメリカ情報部によって上海に送り込まれた主人公は、忍者でいえば「草」のような役割。いつか来るかもしれない非常時に備えて、とりあえず現地に溶け込んでおくのが任務。要するに何も任務がないので、町で知り合って付き合い始めた中国人女性メイから上海語を学びつつ、怠惰な日々を過ごしていました。

そんな中で、たまたま紹介された中国企業CEOのチェン・チイから入社を請われるのですが、そんなことが偶然に起こるはずもありません。中国情報部が何かを仕掛けてきたのでしょうか。そもそも姿を消した恋人メイだって、誰かの指令で接近してきたのかもしれません。アメリカ情報部の上司・バーバンクに伺いを立てても、そのままでいるよう指示されるだけ。彼は、どちらにも正体が暴かれている二重スパイということになるのでしょうか。

カフカ的に不可解な状況が、少しずつ変化しながらも、延々と続くのですが、ここで退屈してはいけないのでしょう。主人公が「ドレフュス的状況」にいることが、最後になるとわかってくるのです。本人も自覚していないまま窮地に陥っていくようなのですが、それは誰が何のために仕組んだことなのか。

「スパイ小説のベテランによる現代諜報戦の裏側」とのことですが、正直言って冗長です。何が問題なのかもわからないまま400ページ近くまで読ませられるのもつらい。実際のスパイ活動などは、このようなアンチクライマックスの連続なのでしょうが・・。

2015/4