りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

本をめぐる物語 栞は夢をみる(大島真寿美ほか)

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「本」をテーマにしたアンソロジーです。時には、こういう本で素晴らしさを知る作家もいるのですが・・。

大島真寿美「一冊の本」
父の葬儀で喪主を務めた洋子が語った、父親の生涯は、全くの嘘でした。私設図書刊長であった父が遺した遺言を実行したにすぎないのですが、そこにはある企みがあったのです。

柴崎友香「水曜日になれば(よくある話)」
地図に載っていない本屋の住所は「1-7-水曜日」でした。会社を辞めたばかりの、駆け出し作家の女性は、どうやってその本屋を探し出したのでしょう。

福田和代「ぴったりの本あります」
不思議な書店の老婆から渡された「三回目まではやり直しがきく」という電子書籍は、人生設計の物語でした。でも、どう転んでも逃れられない運命がありそうです。

中山七里「『馬および他の動物』の冒険」
ある本が古書店から盗まれた背景には、別の犯罪がありました。その本の貴重さを知っていたが故に、燃やして証拠隠滅できなかったことが、犯人の敗因でした。語り手は、ダ・ヴィンチの素描集である「本」自身です。

雀野日名子「僕たちの焚書まつり」
紙の本が消滅して電子書籍コンテンツになった時代。駄本をプリントして焚書しようとする少年たちの前に現れたのは、出版関係者たちの亡霊でした。駄本を作った責任をなすりつけあっているのですが、やはり彼らは「紙の本」を作りたがっているのですね。

雪舟えま「トリィ&ニニギ輸送社とファナ・デザイン」
おんぼろ宇宙船で、貴重な本の運送を頼まれた母子。途中で立ち寄った星の不思議な森で、魂を抜かれてしまった宇宙船を再び飛び立たせたのは、積み荷であった「本たちの意識」でした。愛についての本は、息子ニニギと、依頼主ファナとの恋の予感?

田口ランディ「カミダーリ」
沖縄の不思議な書店でマブイを落とした女性は、不思議な体験をしてしまいます。でも、豚にされるよりはマシですね。

北村 薫「解釈」
人類を研究する宇宙人が持ち去ったのは「吾輩は猫である」と「走れメロス」と「蛇を踏む」。比喩や隠喩を理解できないと、人類研究はできないようです。

2015/3