りぼんの読書ノート

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ワン・デイ(デイヴィッド・ニコルズ)

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大学の卒業式で出会った男女が、互いに魅かれあいながらも遠回りをして、20年後にようやく結ばれるというラブストーリー。20年の歳月が、毎年の7月15日を切り取ることで綴られていきます。アン・ハサウェイジム・スタージェス主演で、2011年に映画化もされました。

生真面目で、自分の力で人生を切り開いていくエマは早稲女ですね。レストランのウェイターから教師となり、最後には念願の作家デビューを果たしただけでなく、自分を女扱いしてくれない「ダメ男」に惚れ続けてしまうのですから。

裕福な家庭出身でハンサムでスマートなデクスターの「ダメ男」ぶりも、なかなかのもの。TVの低俗番組の司会者になったものの、時代に取り残されるとアルコールやドラッグに溺れ、多くの女性とつきあった後のデキ婚にも失敗するのですから。そして自分が落ち込んだ時だけ、「友人」のエマに電話をして呼び出すのです。

「エマはさっさとデクスターを見限って、自分の幸せを掴むべき」なのですが、残念なことにこの種の物語ではそうはなりません。そして20年後、「アラフォー」になった2人がようやく結ばれたときに、もっと残念な出来事が・・。

2人の主人公が、イギリス社会の20年間の変化とともに年齢を重ねていることも、本書の魅力でしょう。80年代に反サッチャーだった若者は、90年代の「クールでトレンディなロンドン」との距離感に悩む青年となり、2000年代には対イラク戦争に責任ある態度を表明する成年となるのです。もっとも、時代に流されていたのは、主にデクスターのほうですけれど。

2015/2