りぼんの読書ノート

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クリフトン年代記6.機は熟せり(ジェフリー・アーチャー)

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激動の20世紀を生きたイギリスのクリフトン家の物語も、大詰めに向かってきました。人気作家の当主ハリーは、獄中にいるソ連の作家ババコフがスターリンの所業を暴いた「アンクル・ジョー」の出版に奔走。ババコフがノーベル文学賞を受賞するという朗報が飛び込んできたものの、再会はなりませんでした。

ハリーの妻でバリントン海運会長のエマは、宿敵ヴァージニアと会社の経営権をかけた裁判に臨んでいます。決め手となるべき、ヴァージニアの手先であったフィッシャー大佐の手紙には、労働党議員の兄ジャイルズの政治生命を脅かす内容も含まれていたのです。このあたりは厳しい選択。さらにエマは、保守党の有力議員であったサッチャーと交友を結ぶのですが、政治家への転身もあるのでしょうか。

ジャイルズは、東ドイツで恋に落ちた通訳のカレンをイギリスに脱出させるものの、どうやら彼女はスパイだった模様。道ならぬ恋の結末は、やはり悲劇で終わりそうです。元妻のヴァージニアといい、ジャイルズの女運の悪さはほとんど自己責任。

本シリーズの悪役であったヴァージニアと、クリフトン/バリントン家を恨む3悪人のメラー、ノウルズ、スローンの運命は、一気に暗転。勧善懲悪的な本シリーズでは、他者を貶めようとする悪巧みが成功することはありませんね。仲間割れまで始まると、もはや末期的症状です。

ハリーの息子セバスチャンは、インド女性との悲恋もあったものの、アメリカへと去っていた元カノのサマンサとよりを戻せそうです。サマンサに引き取られていた一人娘のジェシカのおませぶりは、本書の中での一服の清涼剤。2020年までを描くというシリーズ最終巻の主役は、彼女になるのかもしれません。とはいえ本書の終了時点は、まだ1978年です。あと1巻で40年を描き切ることは可能なのでしょうか?

2017/7