右大臣にまで上り詰めながら誣告によって罪を得て、大宰府権師として左遷された道真公は、絶望のあまり狂死しかねないほどの精神状態。彼の相手役として選ばれたのが、やる気のないことから「うたたね殿」と仇名されている地元官人の龍野保積。
絶望の底に沈んでいた道真を再起させたのは、都にいた時にはわからなかった庶民の困窮を知ったことと、大宰府で起きた横領事件の後始末に協力を求められたこと。長年鍛えた書画骨董の目利きの才能が、ここで生きてきます。左遷先でも、そこで必要とされれば活躍できるというあたりは、現代のサラリーマン社会にも通じる教訓話のようですね。
さて、大宰府の危機を救い、ついでにライバルだった藤原時平に一泡食わすこともできた道真公でしたが、生きて京に帰参することは叶いませんでした。その代わりに、死後には復権を果たしたばかりか、天満天神として神格化されるに至っています。
2015/2