りぼんの読書ノート

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泣くな道真(澤田瞳子)

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王朝時代を主戦場とする時代小説家の澤田さんが、大宰府に左遷された菅原道真の再起をコミカルなタッチで書き上げました。

右大臣にまで上り詰めながら誣告によって罪を得て、大宰府権師として左遷された道真公は、絶望のあまり狂死しかねないほどの精神状態。彼の相手役として選ばれたのが、やる気のないことから「うたたね殿」と仇名されている地元官人の龍野保積。

そこに絡んできたのが、太宰府の実権者となっている養父を頼って都からやって来た美貌の女流歌人・小野恬子(しずこ)。彼女が宮仕えをしていた時の局名が、エピローグで明かされます。

絶望の底に沈んでいた道真を再起させたのは、都にいた時にはわからなかった庶民の困窮を知ったことと、大宰府で起きた横領事件の後始末に協力を求められたこと。長年鍛えた書画骨董の目利きの才能が、ここで生きてきます。左遷先でも、そこで必要とされれば活躍できるというあたりは、現代のサラリーマン社会にも通じる教訓話のようですね。

さて、大宰府の危機を救い、ついでにライバルだった藤原時平に一泡食わすこともできた道真公でしたが、生きて京に帰参することは叶いませんでした。その代わりに、死後には復権を果たしたばかりか、天満天神として神格化されるに至っています。

2015/2