りぼんの読書ノート

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終末のグレイト・ゲーム(ラヴィ・ティドハー)

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異色のスチームパンク伝奇SFである「ブックマン・シリーズ3部作」の最終巻です。第1巻『革命の倫敦』の火星探査機爆破事件(1888年)と、第2巻『影のミレディ』のエメラルド仏陀事件(1893年)の後、欧州世界では「覇権を巡る暗闘(グレイト・ゲーム)」が続いていました。

宇宙の蜥蜴族を王室として頂く英国で、諜報部を仕切っていたマイクロフト・ホームズが殺害されるというショッキングな事件が発生。自らの死を予期していたマイクロフトは、「養蜂家の村」に引退していたスミスを現役復帰させる指示を出していました。

ヴァン・ヘルシング」とともに謎を追うスミスの前に現れたのは、フランケンシュタイン=ジキル薬を服用して怪物となったロシュフォール侯爵や、ドクター・モローとパブロフの交流が生み出した、鈴の音で操られる犬人間などの異形の刺客たち。そしてついに『宇宙戦争』に登場するトライポッドがパリに襲いかかります。

一方で、英国の諜報員ルーシーは、蜥蜴族のヴィクトリア女王の命によって「ブラム・ストーカーの日記」を入手。トランシルヴァニアに幽閉されていた作家の手記を追うルーシーは、やがて「観察者」にたどりつきます。19世紀地球を外宇宙と結ぶリングの開環はミレディの活躍によって阻止されたのですが、やはり何者かが侵入してきていたのです。

もうひとりの視点人物は、ヴェスプッチア(アメリカ)の族長議会から欧州に派遣された奇術師のフーディニ。彼は「ブックマン」の手先となって「観察者」と出会うことになります。

ラストはかなり混乱してしまいました。19世紀ヴィクトリア朝の実在・架空の人物どころか、「何でもあり」状態にしてしまったことが、難度を上げてしまったのでしょう。海賊のワイヴァーン船長など、使い捨てにされたキャラも多かったですしね。もう少し時代考証を尊重して登場人物を絞り、じっくりと書いて欲しいものですが、そうすると荒々しい魅力も失われてしまうのかもしれません。難しいところです。

2015/2