りぼんの読書ノート

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とっぴんぱらりの風太郎(万城目学)

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大坂の陣」の前夜、時代が豊臣から徳川に移ろうとしている時代。藤堂藩の支配下になっていた伊賀忍者は不要な存在になろうとしていました。ある不始末から伊賀を追い出されたニート忍者の風太郎の人生は、1個のひょうたんとの出会いによって、奇妙な方向に転がっていきます。なんと、そのひょうたんは、神性を帯びていたのです。

因心居士と名乗るひょうたんの化身の望みは、30年前に秀吉の妻・ねねによって封じられたまま、豊臣の旗頭となっている分身・果心居士と一体化して、あちらの世界に戻ること。風太郎はひょうたんの化身にこき使われる中で、高台院(ねね)や、ひさご様と名乗る高貴なお方と知り合っていきます。そして、ひょうたんと高台院の依頼を受けて、落城寸前の大阪城に乗り込んでいくのですが・・。

物語を貫いているのは、下級忍者の悲哀です。厳しい修行に耐えて腕を上げても、人間として扱われず、使い捨てにされ、戦場では非道なふるまいを余儀なくされる存在。そんな世界から追放された風太郎は、むしろ幸運なのかもしれないのですが、生きるためには忍びの技を使わないわけにはいかないのです。

伊賀の同僚は、マカオ生まれのマイペース忍者・黒弓。大阪城の奥に潜入している美貌の忍び・常世風太郎をライバル視する蝉。性格最低の美女くのいち・百市。風太郎と一緒に店を持つことを願うひょうたん屋の下働きの芥下。死闘を繰り広げることになるライバルは、徳川サイドのスーパー忍者・残菊とその一党。著者独特の遊び心とユーモアに満ちた展開ですが、ラストは思いがけなく感動的です。

ひさご様の正体と、風太郎の死闘が、400年後のプリンセス・トヨトミに繋がっていくのでしょうが、さすがにそこまでは書いてくれませんでした。続編を期待したくなります。

2015/1