りぼんの読書ノート

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マルドゥック・アノニマス 1(冲方丁)

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未来都市マルドゥック・シティで、軍事技術を用いて改造された異形の者たちの闘いを描いたマルドゥック・スクランブルの待望の続編です。

冒頭いきなり、万能兵器として開発された人語を解するネズミ・ウフコックが、ガス室での死を前にして語り出します。本書は、ウフコックがそんな窮地に陥るまでの物語なのでしょうか。『スクランブル』の主人公で高度な電子干渉能力と空間認識能力を持って死から蘇った少女・バロットは、本書ではほとんど登場していませんが、彼女がウフコックを救出することになるのでしょうか。

先を急ぎすぎました。前作で生き残ったイースター博士は、裏社会の悪事を告発するオフィスを開設。ウフコック以外の新たなメンバーは、視覚強化者ロック、精神干渉者ブルー、人間化学工場スティール、変身者ミラーなど。驚異的演算能力を有する少年トレインとバロットは、オフィス外で普通の学生生活をおくっています。

ほとんど万能のオフィスなのですが、ある企業の内部告発者ケネスからの依頼が、新たな敵である「クインテット」の存在を明らかにしていきます。感覚共有者ハンターの率いるメンバーは、再生能力者トレヴァー、錆発生者ラスティ、ロープ使いバジル、電気制御者シルヴィア、さらにそれぞれ不可視・不死・電磁コントロールの能力を有する3匹の犬たち。

そして彼らの背景には、禁じられたエンハンス技術を濫用いて、次々と新たな異形の者たちを生み出す存在があるようなのです。本シリーズを断片的に俯瞰したマルドゥック・フラグメンツ中の短編によると、不治の病に感染した邪悪な美少女ノーマ・オクトーバーの存在が暗示されているのですが。

単独で潜入捜査を試みるウフコックは、どのような都市の暗部を見ることになるのか。邪悪な存在とは何者で、何を目論んでいるのか。彼はなぜ死の寸前に追い込まれていくのか。いつ発行されるのかわかりませんが、第2巻以降を楽しみに待ちましょう。異能者たちの一騎打ちは、横山光輝氏や山田風太郎氏の忍者ものや、マーヴェル社のアメコミを持ち出すまでもなく、楽しいのです。

2016/9