りぼんの読書ノート

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マルドゥック・アノニマス 4(冲方丁)

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ついにバロットがウフコックの救出に現れます。このシリーズではずっと、階級格差の激しい未来都市で貧民層も富裕層も「均一化=イコライズ」して支配下に置こうとする新興勢力「クインテット」のボス、ハンターの覇権が現実化する過程が中心に描かれていました。それを阻もうとするオフィスは負け戦が続いて有能なスタッフを失い、孤独な潜入捜査を続けていたウフコックも敵の手に堕ちようとしていたところで、ついにバロットが登場するのです。

 

かつて死の淵から救われた少女娼婦であり、一転して強大な力を得て濫用してしまい、それでもウフコックの信頼によって立ち直ったバロットは、普通の学生生活を送っていました。オフィスの責任者であるイースターもウフコックも、彼女を再び修羅の道に巻き込みたくはなかったものの、恩人の窮状を知って黙っていられるバロットではありません。

 

敵が成長して結びついて支配を目指すならば、それ以上の成長と繋がりを持つ「圧倒的な善」を目指せばよいという、少女らしい純粋さが生む信念は強いですね。彼女は謎に包まれたハンターの過去を洗い出し、ウフコックが囚われている場所を見つけ出していきます。そしてその過程で、純粋さが持つ危険にも気づかされてさらに人間的な成長を果たすのですから、まさにニューヒロインです。

 

これまで表面に出ていなかったハンターとシザーズの関係も示されるなど、一層複雑化していきそうですが、物語はどこに着地するのか、その時バロットはどこまで成長しているのか、続編も楽しみです。

 

2019/6