りぼんの読書ノート

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セブン・イヤーズ・イン・チベット(ハインリヒ・ハラー)

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インドで戦争捕虜となったものの、収容所を脱走してチベットの禁断の都ラサにたどり着き、若きダライ・ラマの個人教師を勤めるという数奇の体験をしたオーストリアの登山家ハラーの自伝的作品です。1997年にブラッド・ピット主演で映画化されました。

映画での美しい映像が印象に残っていますが、ネパールからチベットにかけてのヒマラヤ越えは、言うまでもなく過酷なもの。装備も準備もないままの苦難の脱走行に多くのページが割かれているのは、登山家の自伝としては当然ですね。また、純朴な民として描かれたチベット山岳民の貧しさや、半ば囚人としてラサにたどり着くまで何年も限界的な生活をおくらざるを得なかったことも、克明に記されています。

もちろん、鎖国状態にあったチベットの風俗や、少年時代のダライ・ラマとの交友や、中国の軍事侵攻を前にしてラサを脱出せざるをえなくなった結末は、本書の内容が忠実に映画化されたものです。1944年から1951年にかけてチベットで過ごした7年間が、著者の人生観、宗教観に大きな影響をもたらしたことも、結びに明記されています。

2016/9