りぼんの読書ノート

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忍法八犬伝(山田風太郎)

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「八犬士」が活躍した時代から150年後、家康の謀臣・本田正信は、里見家の家宝を盗み出すよう服部半蔵に命じます。狙いはもちろん、里見家のお取り潰し。里見家の凡庸な当主・忠義は、家宝の八珠を将軍家にお見せする約束をしていたのです。

半蔵配下の8人のくのいちは忠義を手玉にとって、家宝の「仁義礼智忠信孝悌」の八珠をまんまと盗み出し、代わりに「淫戯乱盗惑狂弄悦」の珠を置いてくるというのですから、里見家も立場がありません。

さっそく立ち上がる八犬士の子孫たち・・といきたいところですが、当代は全員がご老体。しかも次代を担うはずの息子たちは全員揃って、甲賀に修行に出たまま行方をくらまして江戸で勝手気ままに暮らしているんですね。まさにお家の一大事。しかし、八匹の八房に託された手紙を見た途端、彼らは俄然やる気を出すのです。それは皆が慕う幼い姫君・村雨のため。かくして伊賀vs甲賀の忍法対決が幕を開け・・。

もちろん面白いのです。八犬士はそれぞれオリジナルのキャラクターを髣髴とさせる技を持っていますし、8人の女忍者は、船虫とか玉梓とかオリジナルに登場する悪女の名前のオンパレード。思春期の男の子なんかには刺激が強すぎるような忍法も満載(笑)。山田さんは『八犬傳』のあまりのおもしろさに、山田風太郎版『八犬伝』を書こうとして果たせず、代わりにこの本を書き上げたとのこと。この時42歳。

その思いは20年後になって、馬琴が北斎に物語を語る「虚」と馬琴の実生活の「実」を交互に描きつつ最後には「虚実冥合」する八犬伝となって結実することになります。この2作品を読み比べて見るのも楽しいですね。山田さんのファンなら必読でしょう。

2010/10