りぼんの読書ノート

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残り全部バケーション(伊坂幸太郎)

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伊坂さんの作品によく登場する「裏の顔役」毒島からのアウトソーシングを稼業とする溝口と岡田のコンビを中心にする5章構成の連作長編小説です。テーマは、「人と人の関わりが起こす小さな奇跡」とでもいうことなのでしょう。

「1.残り全部バケーション」
ボスの毒島から独立した溝口と岡田でしたが、岡田が足を洗いたいと言い出します。今すぐランダムな番号にメッセージを送って友人を作れば許可するとの無茶ブリが繋がった相手は、父の浮気が原因で離散する前夜の早坂家。家族解散前のバケーション第1弾の思い出として、岡田と出かけることにした早坂家でしたが、奇妙なドライブの最中に、岡田が毒島の手下に拉致されてしまいます。

「2.タキオン作戦」
時間は遡って、溝口と岡田がボスの毒島から非合法な仕事を請け負っていたころの物語。偶然知り合った少年が父親からDVを受けていることを知った岡田は、父親を改悛させようと試みます。岡田がとった方法は、息子を虐待し続けた父親の20年後の惨めな姿を、本人に見せつけることだったのですが、どうやって?

「3.検問」
岡田が拉致された後、若手の太田と組むようになった溝口は、国会議員の不倫相手を拉致したところ、警察の検問に引っ掛かってしまいます。しかもその検問は、依頼主の国会議員が襲撃されたためというのです。盗難車に偽造免許に拉致女性と、めちゃくちゃ怪しい一行なのに、なぜか検問をすんなりスルーしただけでなく、いつの間にかトランクに大金が積まれていました。伊坂さん得意のドタバタ劇ですね。真相は謎のままなので、後日どこかで種明かしもありそうです。

「4.小さな兵隊」
時代は、岡田が小学四年生の頃まで遡ります。「問題児」がいるのなら「答え児」もいるのでしょうか。岡田が出した「問題」とは、自分の父親はスパイなのか? 担任の弓子先生をストーカー男から守るには? 小学校を見下ろせるデパートのアドバルーン係のバイトをしていた溝口は、当時から岡田と接点があったのです。

「5.飛べても8分」
太田とのコンビを解消して優秀な高田と組むようになった溝口は、当たり屋に失敗して大腿骨骨折。偶然、同じ病院に入院していた大ボスの毒島に殺害予告が届けられ、大騒動になっていくのですが、それは岡田の復讐をもくろむ溝口が仕掛けた罠だったのです。

どうも、岡田はどこかで生きていそうですね。これだけの大騒動を起こした後、溝口と岡田がどうするのか、毒島との関係がどうなっていくのか。完全に決着がついていないエピソードもあるので、続編もありそうに思います。

2015/1