りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015/2 低地(ジュンパ・ラヒリ)

5年をかけて書き続けられた高田郁さんの「みをつくし料理帖」が、第10巻で完結しました。人物描写に深みがないとか、ご都合主義とかの批判も聞きますが、著者の人柄がにじみ出てくるような作風は嫌いではありません。

1位はジュンパ・ラヒリさんの10年ぶりの第2長編にしました。「怪獣小説」と銘打った宮部さんの『荒神』が「不思議ホラー寄り」だったのは、少々残念です。

1.低地(ジュンパ・ラヒリ)
その名にちなんで』以来、10年ぶりとなる第2長編は、やはりインドに生まれてアメリカで暮らすようになった移民の物語でした。地下活動で死んだ弟の妻と結婚し、弟の娘を自分の子供として育てる男の「疑似家族関係」はどうなっていくのでしょう。類型的な展開に陥ることなく、表層的な感情に囚われることなく、それでいて読者の関心を掴んで離さない、凄まじい筆力を感じます。

2.シングル&シングル(ジョン・ル・カレ)
違法な取引を繰り返していたロシア・マフィアを裏切ったとして、会社重役は殺害され、社長は失踪。父親である社長を救うため、過去の確執を超えて、父親の行方を追う息子。しかし、父親の取引の違法性を、はじめに当局に通報したのは、息子自身だったのです。名作『パーフェクト・スパイ』と同様に、著者自身の父親との関係が反映されているようです。

3.みをつくし料理帖10 天の梯(高田郁)
みをつくし料理帖」シリーズがついに完結。前巻から積み残されていた問題は、全部解決。卑劣なライバル登竜楼との競争も、ご寮人さんの息子・佐兵衛の濡れ衣も、あさひ太夫こと野江の身請けも、もちろん澪自身が歩み続ける道も、源斉先生との関係も、全部きれいに決着がついてしまいました。バリバリのハッピーエンドですが、これだけ苦労した澪のことですから、こうじゃないと読者が許してくれないでしょうね。読後感は爽やかです。



2015/2/27