りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ウナノハテノガタ(大森兄弟)

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伊坂幸太郎さんの提案による「螺旋プロジェクト」の古代編です。互いに相いれないという海族と山族は、紀元前3000年もの昔から対立していたのですね。この頃の日本は弥生時代だったはずです。

 

海の民「イソベリ」が信仰する楽園「ウナノハテノガタ」とは「海の果ての方」を意味するのでしょうか。彼らの呪い師であるカリガイは、死者を舟に乗せて再生の島へと運び続けることで、人が死すべき運命にあることを隠し続けていました。しかしカリガイの息子として、父親の役割を担うことが運命づけられた少年オトガイは、真実を知って恐れおののきます。

 

そのころ大地震によって大地が崩れたことで、崖の上に住んでいた山の民「ヤマノベ」が海辺の村へとやってきます。両者にとって不幸なことに、調停者であるはずの片目のウェレカセリは亡くなってしまいました。ヤマノベから追放された女マダラコは、イソベリに協力してヤマノベの攻撃を防ごうとするものの、死を知らないイソベリは自分の肉体を傷つけていくばかり。さらには海神の顕現であるはずのウナクジラが浜に打ち上げられ、腐乱していく様子を見て混乱したイソベリたちはオトガイとマダラコを追放してしまうのです。果たして2人は争いを止めることができるのでしょうか。それとも2人は新しい未来を拓くことになるのでしょうか。それとも・・。

 

8作家による8作品からなる「螺旋プロジェクト」も、残りは1作になりました。競作とはいえ制約は緩やかなので、作家の方々は、それぞれの作風で独自の物語を紡いでくれているようです。「未来篇」を最後に残したわけですが、吉田篤弘氏による『天使も怪物も眠る夜』は、どのような未来を見せてくれるのでしょうか。

 

2021/5