りぼんの読書ノート

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天冥の標5.羊と猿と百掬の銀河(小川一水)

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シリーズ第4巻機械じかけの子息たちから36年後。小惑星パラスで、細々と地下の野菜工場を営んでいる農夫タック・ヴァンディには、大きな秘密と悩みがありました。

彼が抱えている秘密とは、彼自身の生い立ちと、反抗期を迎えた一人娘ザリーカの正体のこと。悩みのほうは不調な機械、ぎりぎりの経営、自分勝手な地区長の要請による研修生アニーの受け入れ、大規模食品チェーンの進出など山積み状態。中でも一番シリアスなのは、火星を丸ごと不毛な地に変えた植物レッドリートの防疫。実はそれらの問題はすべて、宇宙的な規模で繋がっていたというから驚きます。

本書のもう一方のストーリーは、寄生的被展開体かつ超階層型意識流統合体でありながら、人類の行く末を気にかけているようなダダーことノルルスカインが、自然発生してからの遍歴。これこそ宇宙的です。それがどのようにして生まれ、自意識を持ち、成長し、現在に至っているのか。同じ被展開体であるミスチフとの宿縁の起源はどこにあったのか。

ということで、このシリーズの背景がいきなり、宇宙規模で争われている「ノルルスカインvsミスチフ(実はオムニフロラ)」であることが明らかにされ、さらにオムニフロラの本体とおぼしき宇宙船の接近が告げられます。これまで語られてきたアンチオックスや、イシスら海賊や、冥王斑キャリアのプラクティスや、医師団、ラバーズ、ロイズらの関係が、あらためて位置づけ直されていくのでしょう。3部作として著された次巻は、大きな転回点になりそうです。

2014/11