りぼんの読書ノート

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ユゴーの不思議な発明(ブライアン・セルズニック)

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マーティン・スコセッシ監督による映画「ヒューゴの不思議な発明」の原作です。映画に対する愛情をテーマとする洗練されたファンタジーは、まるで本書自体が映画のよう。まるでコマ割りのように描かれた何ページもの挿画も魅力的ですし、実際の映画も原作に忠実なのですから。

1930年代のパリ。行方不明になった叔父に代わって、駅の時計台に隠れ住みながら、時計の時間を合わせている12歳の孤児ユゴー。亡き父が遺した機械人形の修復を心の支えにしているユゴーは、駅のおもちゃ屋から部品をくすねようとした時に店の主人ジョルジュにつかまってしまいます。

人形を描いた手帳を見て、なぜか色をなすジョルジュ老人。ジョルジュ夫妻の養女イザベルが首にかけているハート型のペンダントが、なぜ機械人形の鍵穴にぴったり合うのか。そもそもジョルジュが作ったおもちゃが、なぜ機械人形の修復にぴったりはまっていたのか。そして、動き出した機械人形が書いた絵は、「ジョルジュ・メリエス」のサインとともに描かれた、昔の映画の一場面だったのです。

ジョルジュの意外な過去。再び回り始めた人生の時計。孤児たちが得た「家族」。それに加えて読者には、ジョルジュ・メリエスが実在した人物であり、映画の創世期にさまざまな技術を駆使したSFXの創始者であったことを知る楽しみもあるのです。

映画版も良かったですね。アカデミー作品賞こそ逃したものの多くの賞を受賞した作品ですが、興行成績は悪く赤字だったとのこと。この映画が唯一ヒットしたのが日本だけだったというところが、何となく誇らしく思えてしまいます。

2014/11