りぼんの読書ノート

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ハンガーゲーム0上(スーザン・コリンズ)

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映画としてもヒットした『ハンガー・ゲーム3部作』の前日譚は、本編の悪役であったコリオレーナス・スノーの若き日の物語でした。文明崩壊後の北アメリカで内戦に勝利したパネムが、なぜ支配下に置かれた12の地区から選ばれた男女24人の少年少女に殺し合いをさせるようになったのか。そして絶対的権力者のスノー大統領は、どのようにして生まれたのか。物語は64年前に遡ります。

 

ネムの名門スノー家は反乱軍との内戦で財産を失い、18歳の青年であったコリオレーナスはアカデミーに通う優等生でありながら衣食にも事欠く日々をおくっていました。両親は亡くなり、身内は過去の栄光にすがりつく祖母と、やはり孤児の従姉タイガレスのみ。彼にとって大学への奨学金を手に入れることは死活問題だったのです。そんな時に彼は、ハンガーゲームの教育係に選ばれます。彼らの役割は、生贄とされる少年少女たちとペアを組んで作戦や宣伝活動を行うことなのですが、本編の時代には既に廃止されていたようです。

 

もっとも支配者側の青年と、大半が殺される運命にある非支配地区の生少年少女たちが心を通わせることなどありえません。しかもコリオレーナスが担当することになったのは、最弱の第12地区の少女であり、彼女の唯一の武器は歌うことでしかなかったのです。しかし彼は、その少女ルーシー・グレイに恋をしてしまったのです。彼女を勝利させることで奨学金と恋を手に入れようと奮闘するコリオレーナスは、上流階級の友人たちを裏切り、ルール違反すら犯してしまうのですが・・。

 

上巻を読む限りでは彼は、多少屈折しているものの正義感が強い、純真な青年でしかありません。彼はなぜ、過酷な支配者へと変貌してしまうのか。その答えは下巻にあるようです。亡き父親の旧友であったというのに、なぜかコリオレーナスを憎んでいる学生部長ハイボトムや、ハンガーゲームの責任者であるゴール博士が抱えている秘密も明らかにされていくのでしょう。

 

2021/7